2010年10月 4日

猫又お姉ちゃんに可愛がられたい! 『ネコあね。』(奈良一平)

『ネコあね。』(奈良一平/別冊少年マガジン連載)

(初出時、タイトルのカナ表記を誤りました。正しくは『ネコあね。』です。ごめんなさい。)


amazon.co.jp


既に9月発売済みのコミックスですが、取り上げ損ねたことを猛省しております。
初動に貢献できなかった反省文代わりにレビュー書きます。


ねこあね。

主人公・御堂銀ノ介は、祖母と二人暮らしの中学生。
ある日、目が覚めると布団の上に載っていたのは、飼い猫の杏子が猫又として変身した女の子だった......!
というお話。
公式サイトに試し読みページあり


人間に化けられるようになった杏子お姉ちゃんが、不器用ながらも精一杯に弟のお姉ちゃんであろうとする姿をコメディかつハートフルに描いた、素敵な姉漫画なのですよ!
先週末に届いてから、毎晩寝る前に読み返してしまうほどの大ブーム中。


『ねこあね。』の姉要素的な魅力は、杏子お姉ちゃんがお姉ちゃんたろうとする健気な姿にあり。
人間化した杏子お姉ちゃんは、自分のことを「お姉ちゃん」と呼んで、銀ちゃんこと銀ノ介に構うのですが、それは当然、猫としての年齢は銀ノ介より上だから。
ただ、それ以上に杏子お姉ちゃんが姉でいようとするのは、まだ猫だった頃からずっと銀ノ介のことを見守っていたという自負があるからなのです。
銀ノ介を見守っていたのにはきちんとした理由があるのですが、それは本編を読んでいただくとして。

ねこあね。

人間になれた(※自分の意思で猫の姿にも戻れる)とはいえ、まだ人間生活に慣れなかったり、猫の習性が抜けきらなかったりして空回りや失敗するところが可愛くて和む一方で、「私は銀ちゃんのお姉ちゃんだから」という意識は作品の中でも非常に強く表れていて、姉属性の読者の心をズッッキューーンと撃ち抜きます。
第2話以降とても良いエピソードが続くので、公式サイトの試し読みで終わらず、ぜひ単行本で味わっていただきたい!

さらに読み進めていくと、良いお姉ちゃんになろうと奮闘する杏子お姉ちゃんを「頑張れ~」と応援したくなるのですが、そんな上から目線は実はおこがましくて、弟を思う姉の愛はさらに上を行っていることを思い知らされるハズです。

ねこあね。

猫から突然人間に変身した姉なので、いわゆる「降って湧いた姉」タイプに分類されるものの、飼い猫の時代からずっと見守ってきた姉ということで、全く他人の姉とは言えない特殊型です。
いきなり現れた姉だけど、ずっと一緒に暮らしてきた姉。ちょっと不思議な感覚。
リアル姉がいない男子諸君の「お姉ちゃんが欲しい」の"お姉ちゃん"とは、自分のことを昔からよく知ってくれているお姉ちゃん、という叶わぬ夢を指すのですが、杏子お姉ちゃんはまさにそんな存在。
その意味で、『ねこあね。』は、「目の前にお姉ちゃんが現れたら...」の妄想で心の隙間を満たす負け組男子こそ楽しめる姉漫画なのではないかと思うわけです。


作品の中心テーマが杏子お姉ちゃんと弟の銀ノ介の姉弟関係にあって、今後も間違いなく姉属性を楽しませてくれる漫画になります。
作者の奈良一平先生は、こちらがデビュー作だそうで、初打席いきなりホームラン。
大変有望な姉漫画家様とお見受けしました。
こんなシーンが自然に出てくることとかね!

ねこあね。


てことで、未読ならば書店かamazonに弟まっしぐら!